1.物質の成り立ち 私たちの身のまわりには、水、空気、鉛筆、金属、プラスチックなど、さまざまな材料があります。 これらは見た目や性質は異なりますが、共通してすべて「物質」と呼ばれる材料でできています。 物質をさらに細かく見ていくと、とても小さな粒(粒子)が集まってできていることがわかります。 たとえば、氷が溶けて水になったり、湯気になって広がったりするのは、粒子の並び方や動き方が変化するためです。 固体では粒子がぎっしり並び、液体ではある程度自由に動けるようになり、気体では粒子が自由に飛び回ります。 このような粒子の状態の違いが、物質の見え方やふるまいを決めています。 2.原子と分子 物質をつくる粒子には「原子」と「分子」があります。 原子 物質を形づくるもっとも基本的な粒で、これ以上分けることはできません。 原子には多くの種類があり、その種類によって性質が異なります。 鉄をつくる原子、酸素をつくる原子など、現在では約100種類が知られています。 分子 原子がいくつか結びついてできた粒です。 身近な例として水分子(H₂O)があり、水素原子(H)2つとと酸素原子(O)が結びついてできています。 原子そのものが集まってできている物質もあれば、分子が集まってできている物質もあります。 たとえば鉄は鉄原子だけでできていますが、空気中の二酸化炭素は炭素原子と酸素原子からなる分子でできています。 3.物質を表す記号(元素記号・化学式) 原子の種類を表すために、元素記号が使われます。 元素記号は世界共通で、英語をもとにした1~2文字で表されます。 H:水素 O:酸素 C:炭素 Fe:鉄 Na:ナトリウム また、物質がどの原子をいくつ含んでいるかを表すために化学式が使われます。 H₂O→水分子(水素2つ+酸素1つ) CO₂→二酸化炭素(炭素1つ+酸素2つ) 化学式を読むことで、物質の成り立ちを正しく理解することができます。
1.化学変化と原子・分子 物質が別の物質に変わることを「化学変化」といいます。 代表的な例は次の通りです。 鉄がさびて酸化鉄になる 銅を加熱すると黒い酸化銅になる 水を電気分解すると水素と酸素ができる 化学変化で大切なのは、物質が変わっても「原子そのものはなくならず、別の原子に変わることもない」という点です。 化学変化は、原子の組み替えによって分子の種類が変化する現象です。 2.質量保存と化学変化 化学変化の前後では、原子の種類も数も変わりません。 そのため、化学変化の前と後で物質全体の質量は変わらないという法則が成り立ちます。 これを「質量保存の法則」といいます。 例) 酸化銅を炭素で加熱して銅を取り出す実験では、反応後にできた銅と発生した二酸化炭素の質量を合わせると、反応前の酸化銅と炭素の質量の合計と一致します。 もし質量が合わない場合は、気体が外に逃げてしまったなど、測定条件に原因があります。 質量保存の法則は「原子はなくなったり増えたりしない」という基本的な考え方に基づいています。 3.酸化と還元 化学変化の中でも特に重要なのが「酸化」と「還元」です。 酸化 物質が酸素と結びつく反応 例) 鉄 → 酸化鉄 銅 → 酸化銅 マグネシウム → 酸化マグネシウム 加熱すると光を出したり、物質の色が変わったりすることが多く、熱などのエネルギーが発生する場合もあります。 還元 酸化された物質から酸素を取り除く反応 例) 酸化銅+炭素 → 銅+二酸化炭素 (炭素が酸化され、酸化銅が還元される) 酸化と還元はセットで起こり、一方が酸化されると、もう一方が還元されます。 物質どうしが酸素をやり取りする関係で成り立っています。
1.化学反応式とは何か 物質が別の物質に変わる化学変化では、原子の組み替えが起こります。 このとき、どの物質がどのように変化したかを化学式を使って表したものが化学反応式です。 化学反応式は 反応前の物質 → 反応後の物質 という形で書き、化学変化の内容を簡潔に示すことができます。 例) 水の電気分解 2H₂O → 2H₂ + O₂ この式から、水が水素と酸素に分かれることがわかります。 2.化学式と係数の意味 化学反応式では、物質を表す化学式の前に数字(係数)をつけることがあります。 化学式 物質をつくる原子の種類と数を表す記号 例) H₂O、CO₂、NaCl など 係数 化学式の前につける数字で、その物質が何個(何分子)あるかを表します。 例) 2H₂O は水分子が2つ 3CO₂ は二酸化炭素が3つ 重要なのは、化学式そのものは変えてはいけないということです。 変えられるのは係数だけです。 3.原子の数をそろえる(係数の付け方) 化学変化では、原子はなくなったり増えたりしません。 そのため、化学反応式では反応前と反応後で原子の数が同じになるように係数をつけます。 例として、酸化銅と炭素の反応を考えます。 まず化学式を書く CuO + C → Cu + CO₂ 左右の原子の数を比べる Cu:左 1、右 1 O:左 1、右 2 C:左 1、右 1 酸素の数がそろっていないので調整します。 CuO を 2 個にすると酸素が 2 個になる 2CuO + C → 2Cu + CO₂ これで左右の原子の数がすべて一致します。 4.酸化・還元の反応式 酸化と還元は、化学反応式で表すと理解しやすくなります。 酸化 物質が酸素と結びつく反応 例) マグネシウムの燃焼 2Mg + O₂ → 2MgO 還元 酸化された物質から酸素が取り除かれる反応 例) 酸化銅と炭素の反応 2CuO + C → 2Cu + CO₂ この反応では、CuO が酸素を失って還元され、C が酸素を受け取って酸化されます。 酸化と還元は必ず同時に起こることがわかります。 5.質量保存と反応式の関係 化学反応式では、左右で原子の数がそろっています。 これは、化学変化の前後で原子の種類も数も変わらないことを表しています。 そのため、化学反応式はそのまま 質量保存の法則(反応前後で質量が変わらない)を示しています。 例) 2H₂O → 2H₂ + O₂ 水に含まれる水素原子と酸素原子の数は、反応後の気体の原子数と完全に一致します。 このように、化学反応式は化学変化の内容だけでなく、質量保存の考え方も表している重要な表現方法です。
1.物質の構成 私たちを取り囲むすべての物質は、原子という非常に小さな粒子でできています。 原子は約100種類以上あり、その組み合わせによって多様な物質が生じます。 水、二酸化炭素、エタノールなどのように、複数の原子が一定の割合で結びついた粒子を分子と呼びます。 一方で、金属やダイヤモンドのように、原子が規則正しく並んだ構造をもつ場合もあります。 物質の性質は、原子の種類だけでなく、原子同士の結びつき方や並び方によって決まります。 このため、高校化学では「原子」と「結合」の理解が非常に重要になります。 2.物質の分類(純物質・混合物) 物質は大きく純物質と混合物に分類されます。 純物質 ただ1種類の物質だけからできている物質 一定の融点・沸点をもち、性質が明確です。 例) 水(H₂O)、酸素(O₂)、食塩(NaCl)、鉄(Fe) 純物質にはさらに単体と化合物があります。 単体 同じ種類の原子だけでできた物質 例) O₂、Fe 化合物 複数種類の原子が一定の割合で結合した物質 例) H₂O、CO₂ 混合物 複数の物質が混ざり合った物質 性質は混ざり方によって変化し、一定の融点・沸点をもちません。 例) 空気、海水、石油、砂糖水 混合物は、ろ過・蒸留・再結晶などの物理的操作によって成分を分けることができます。 これは化学変化を伴う反応との大きな違いです。
1.原子の構造 原子は、中心にある原子核と、その周囲を動く電子からできています。 原子核 陽子(プラスの電荷)と中性子(電荷なし) 電子 マイナスの電荷をもつ粒子 陽子の数はその原子の「種類」を決め、原子番号として表されます。 電子は原子核の周りを層状に配置され、外側の電子(価電子)が化学反応に大きく関わります。 2.元素の周期表と性質 周期表は、原子番号の順に元素を並べた表で、性質が規則的に変化する(周期性)ことを示しています。 代表的な周期性 価電子の数 同じ族で共通 イオンになりやすさ 金属は陽イオンになりやすく、非金属は陰イオンになりやすい 原子半径や電気陰性度 周期表上の位置に応じて増減 金属元素(Na、Mg、Fe など)は左側に多く、非金属元素(H、C、O、Cl など)は右側に多く分布します。 周期表は、化学結合の種類や反応性を理解する基盤となります。 3.化学結合(イオン結合・共有結合・金属結合) 物質がつくられるとき、原子同士は何らかの方法で結びつきます。 これを化学結合といいます。 イオン結合 金属原子が電子を失って陽イオンに、非金属原子が電子を受け取って陰イオンになり、それらが静電気力で引き合う結合です。 例) NaCl(塩化ナトリウム) 性質:硬い、融点が高い、水に溶けると電気を通しやすい 共有結合 非金属原子同士が電子を共有して結びつく結合です。 分子をつくる場合と、結晶として網目構造になる場合があります。 例) H₂O、CO₂、O₂、ダイヤモンド、SiO₂ 性質:分子性物質は沸点が低いことが多く、共有結合の結晶は非常に硬い 金属結合 金属原子が規則正しく並び、価電子が全体に広がって自由に動ける状態で結びつく結合です。 例) 鉄、銅、アルミニウム 性質:電気・熱をよく通し、展性や延性が大きい 4.物質の三態と粒子のモデル 物質は温度や圧力によって、固体・液体・気体の三つの状態をとります。 固体:粒子が密に並び、位置が固定されている 液体:粒子は近くにあるが動き回れる 気体:粒子が遠く離れて自由に飛び回る 粒子の運動が活発になるほど、物質は気体側に変わりやすくなります。 粒子モデルは、状態変化・圧力・気体の法則を理解する基礎となります。
1.物質量(モル) 原子は、中心にある原子核と、その周囲を動く電子からできています。 化学反応では原子や分子の数を扱う必要がありますが、粒子は非常に小さく直接数えることはできません。 そこで、6.02 × 10²³ 個(アボガドロ数)をひとまとまりとした単位を用います。 これがモル(mol)です。 モルの基本関係 物質の量(mol)= 物質の質量(g) ÷ モル質量(g/mol) この式を使うと、手元にある物質の質量(g)から、物質の量(mol)の粒子が含まれているかを求めることができ、モル数が分かると、化学反応式を使って他の物質の量も計算できるようになります。 モル質量 元素の原子量または化合物の式量を g 単位で表したもの。 例) H₂O のモル質量 2 × 1(H)+ 16(O)= 18 g/mol モル質量が分かると、質量(g)と物質量(mol)を自由に変換できるようになります。 化学計算の出発点となる重要な値です。 標準状態の気体 気体は標準状態(0℃、1 atm)で 1 mol 当たり 22.4 L の体積をもちます。 この性質を利用すると、気体の体積からモル数を求めたり、反応で発生・消費する気体の量を体積で計算したりできます。 化学反応式とモル 化学反応式の係数は物質量の比(mol比)を示します。 例) 2H₂ + O₂ → 2H₂O H₂ と O₂ は 2 : 1 の割合で反応し、生成する H₂O は H₂ と同じ 2 mol です。 この比を使うことで、反応に必要な物質量や生成物の量を計算できます。 また、どちらの物質が先に使い切られるか(制限試薬)を判断することもできます。
1.共有結合の仕組みと分子構造 共有結合は、非金属原子同士が 電子を共有して結びつく結合 です。 この結合によってできる粒子が 分子 であり、分子の形や性質は結合の仕方で決まります。 分子の形(VSEPR理論に基づく) 電子対の反発を最小化するように原子が配置されます。 水(H₂O):折れ線型 二酸化炭素(CO₂):直線型 メタン(CH₄):正四面体型 分子の形は、極性・沸点・融点・溶解性などの物理化学的性質に大きく影響します。 2.結晶の構造 結晶とは、原子・イオン・分子が規則正しく並んだ固体です。 結晶の種類によって性質は大きく異なります。 分子結晶 分子が分子間力で規則正しく並んでいる結晶です。 例:氷(H₂O)、ヨウ素(I₂) 性質:軟らかく、融点が低い イオン結晶 陽イオンと陰イオンが静電気力で結びつき、規則正しく並んでいる結晶です。 例:NaCl、KBr 性質:硬く融点が高い、水に溶けると電気を通す 金属結晶 金属原子が規則正しく並び、自由電子が全体を流れている結晶です。 例:銅、鉄 性質:電気・熱をよく通し、展性・延性が大きい 共有結合結晶 原子が共有結合で三次元的に結合している結晶です。 例:ダイヤモンド、SiO₂ 性質:非常に硬く、融点も高い
1.気体・液体・固体の構造と性質 物質の三態は、粒子の運動と並び方で説明できます。 固体 粒子は密に並び、ほぼ動かない。 一定の形を保ち、結晶の種類によって硬さや融点が変わる。 液体 粒子は互いに接しているが自由に動ける。 容器に形を合わせ、流動性をもつ。 密度は固体より低くなる場合もある。 気体 粒子はほぼ自由に動き、互いに離れている。 容器の形と体積に合わせ、圧力や温度によって体積が変化する(気体の法則)。 状態変化には融解・凝固、蒸発・沸騰、昇華などがあります。 これらは粒子の運動エネルギーと相互作用のバランスによって決まります。
1.無機物質の構造 無機物質は、単純な元素や比較的簡単な化合物で構成されています。 結晶の種類によって性質が決まります。 構造の分類 イオン結晶例)NaCl 分子結晶例)氷 H₂O、ヨウ素 I₂ 金属結晶例)鉄、銅 共有結合結晶例)ダイヤモンド、SiO₂ 具体例 酸(HCl)、塩基(NaOH)、塩(NaCl)、酸化物、水酸化物などがあります。 性質・役割 無機物質は化学反応や電気分解で扱いやすく、鉱物や無機塩として生活や産業に広く利用されています。 2.有機物質の構造 有機物質は、炭素を骨格とする化合物で、C, H, O, N, S, Cl などを含みます。 構造が多様で性質も幅広いです。 構造の分類 炭化水素の飽和 アルカンC-C 単結合メタン 炭化水素の不飽和 アルケンC=C 二重結合エチレン アルキンC≡C 三重結合アセチレン 官能基をもつ化合物 アルコール-OHエタノール カルボン酸-COOH酢酸 ケトン -CO-アセトン 性質・役割 官能基の違いによって反応性や性質が決まります。 有機物質は、生物体成分(糖・脂質・タンパク質)、医薬品、燃料、プラスチックなど、生活や産業に直結しています。